『 SWANSONG ( 1996 ) 』 by CARCASS [ Death & Roll ]
ジェフ・ウォーカー ( Jeff Walker ) ヴォーカル / ベース
ケン・オーウェン ( ken Owen ) ドラム
ビル・スティア ( Bill Steer ) ギター
カルロ・レガダス ( Carlo Regadas ) ギター
ジェフ・ウォーカー ( Vo, B ) を中心とするイングランドのエクストリーム・メタルバンド、カーカス ( CARCASS ) の5th『 SWANSONG 』。エクストリーム・メタルと呼称するのは、1st『 Reek of Putrefaction 』と 2nd『 Symphonies of Sickness 』がグラインドコア作品であり、3rd『 Necroticism – Descanting the Insalubrious 』と4th『 Heartwork 』がマイケル・アモット ( G、現アーチ・エネミー ) 加入の影響によるデスメタル作品となり、この5th『 SWANSONG 』でハードロックへと変遷していった過程を総称しての事。
1st、2nd、でファンになった人からすると、3rd、4th、はともかく、5th はほとんど受け入れがたいものだったはず ( それらの音楽性の違いに対するファンの嗜好には強いものがあるので )。日本で当時のカーカスの名が知られるようになったのは、この1st から3rd のトイズファクトリー日本盤における各曲の奇怪なタイトルもひとつのきっかけだったけど、余りにも変過ぎて笑うしかなかった ( 今で言う大喜利みたいな感じ )。でも僕はハードロック曲調でありながらジェフ・ウォーカーのかつてのデスヴォイスが薄まったダミ声が炸裂するという "変な普遍性 ( 笑 )" に至ったこの5th が好きですね。これを Death 'n' roll ( デスメタルとロックンロールを合わせた造語 ) だとする上手いカテゴリー名称も生まれたりした。発売時からかなり年月が過ぎたけど、年を取った今でも普通に聞ける中毒性がある。格好いいと思う。
『 Barbed Wire Soul 』( 1997 ) by BLACK STAR [ Death & Roll ]
ジェフ・ウォーカー ( Jeff Walker ) ヴォーカル / ベース
ケン・オーウェン ( ken Owen ) ドラム
カルロ・レガダス ( Carlo Regadas ) ギター
マーク・グリフィス ( Marc Griffiths ) ギター
そして、当時、カーカスのラストアルバムと思われていた『 SWANSONG 』で切り開いた "Death 'n' roll" をさらに洗練させたのが、カーカスを脱退したビル・スティア以外のメンバーで結成した BLACK STAR の1stアルバム『 Barbed Wire Soul ( 1997 ) 』です ( BLACK STAR というバンド名自体が『 SWANSONG 』中の曲名に由来する )。カーカスは2007年から再活動して2013年に6th『 Surgical steel 』、2021年に7th 『 Torn Arteries 』を発表している現状もあって、『 Barbed Wire Soul 』の1作で活動を終えてしまった BLACK STAR 自体の存在がカーカスファンの間でさえ取り上げられる事はほとんどなくなってしまっている。
でも "Death 'n' roll" の音楽性が好きな人にとっては、この『 Barbed Wire Soul 』は間違いなく気に入るであろうし、このままカーカスの歴史の陰として消えてしまうには余りにも勿体無さ過ぎる程の出来のいい作品だと思う。
『 Firebird 』( 2000 ) by Firebird [ Hard Rock ]
ビル・スティア ( Bill Steer ) ギター
ラドウィグ・ヴィット ( Ludwig Witt ) ドラム
レオ・スミ― ( Leo smee ) ベース
『 SWANSONG 』後にカーカスを脱退したビル・スティアは1999年に、1960~70年代のハードロック / ブルースロック志向の音楽性を追求したトリオロックバンド、Firebird を結成する。『 SWANSONG 』で到達したエクストリーム系のハードロックをさらにレイドバックさせたかのような純正のハードロックそのもの。この "古典的ロックへの回帰" が CARCASS、BLACK STAR、Firebird、そしてここにCARCASS でビル・スティアと共にツインギターを担っていたマイケル・アモットの SPIRITUAL BEGGARDS、を加えたバンドらの間で共鳴していた様は、当時を知る人ならば感じとっていたと思う。Firebird のドラマー、ラドウィグ・ヴィットは SPIRITUAL BEGGARDS も兼任していましたからね。
そして Firebird の1st『 Firebird 』はバンドの音楽性を見事に表現した名盤だと思う。2nd~6th のアルバムには最初は新鮮だったハードロック的アプローチにも徐々にマンネリ化の壁 ( これは何よりもビル・スティア自身が感じていたかもしれない、だからこそカーカス再活動に参加したのではと思えるのですが ) が表れて来る様子が見えてきて今では余り聞く事もないのですが、この1stだけは今でも定期的に聞く。何年経とうが、その度に心が揺さぶられる ( 特に1曲目が始まった瞬間とか )。