〈 It / Es 〉thinks, in the abyss without human.

Transitional formulating of Thought into Thing in unconscious wholeness. Circuitization of〈 Thought thing 〉.

▶ 今月聴いた音楽 / Spiritual Beggars【 2023年3月 ② 】



『 Mantra III ( 1998 )  』 by  Spiritual Beggars        [ Stoner Rock

 

マイケル・アモット ( Michael Amott ) ギター
クリスティアン・"スパイス"・ショーストランド ( Christian "Spice" Sjöstrand ) ヴォーカル / ベース
ラドウィグ・ヴィット ( Ludwig Witt ) ドラム

 

 

 

今月よく聴いた音楽【 2023年3月① 】〉の記事内でも少し触れたハードロックバンド、 スピリチュアル・ベガーズ ( Spiritual Beggars ) の 3rdアルバム Mantra III ( 1998 ) 』について。スピリチュアル・ベガーズは、元カーカスのギタリストであり、現在は自身のメロディック・デスメタルバンド、アーチ・エネミー ( Arch Enemy ) を率いるマイケル・アモットのサイド・プロジェクトバンドなのですが、そこにはデスメタルだけではない、マイケルの1960~70年代のハードロックへの傾倒ぶりが表れています。

 

しかし、彼らの 3rdアルバム『 Mantra III ( 1998 ) 』をハードロックと言い切るには少し違和感がありますね。スピリチュアル・ベガーズの音楽性をハードロックと呼んでしっくりくるのは 4thアルバムAd Astra ( 2000 ) 』以降の話であり、1st『 Spiritual Beggars ( 1994 ) 』、2nd『 Another Way to Shine ( 1996 ) 』、においてはストーナーロックStoner Rock、いわゆるスローかつヘヴィなリフの反復がダウナー的心地よさをもたらすロック ( かつてのサイケデリック・ロックやアシッド・ロック、そしてブラック・サバス、の現代的誇張ヴァージョンともいえる ) が展開されている。

 

そのように1st、2ndではアンダーグラウンド臭が強かったのですが、3rd『 Mantra III 』は アンダーグラウンド的でありながらもサイケデリック色の濃い普遍的ハードロックへ向かおうとする意志 が感じられる優れた作品となった。初めてこれを聞いた時、アルバム全体の完成度の高さに衝撃を受けましたから ( これからの人生でもずっと聞き続けるだろうなと思ったくらい )。世界的に見れば、これを知らない人の方がほとんどなくらいマイナーなものなのですが、音楽的普遍性に向かう才能が具現された作品 ( 音楽の分野に限らない話ですが ) は皆が知らない所でも現れているのだなと思いましたね。これはスピリチュアル・ベガーズにおけるストーナー・ロックからハードロックへの移行期に位置する創造性あふれる作品だといえるでしょう。

 



『 Ad Astra ( 2000 )  』 by  Spiritual Beggars        [ Hard Rock

 

マイケル・アモット ( Michael Amott ) ギター
クリスティアン・"スパイス"・ショーストランド ( Christian "Spice" Sjöstrand ) ヴォーカル / ベース
ラドウィグ・ヴィット ( Ludwig Witt ) ドラム

 

 

スピリチュアル・ベガーズが、一般的ではないメタル的なヘヴィさを強く保ちつつも、普遍的ハードロックともいうべき境地に到達したのがこの4thAd Astra ( 2000 )  』。9thアルバム『 Sunrise to Sundown ( 2016 ) 』までの全てのアルバムを聴くのが難しいと思う人でも、3rd『 Mantra III ( 1998 ) と4th『 Ad Astra ( 2000 )  』を聞いておけば充分かなと思えるくらいスピリチュアル・ベガーズのエッセンスが詰まっていますね。

 

特に3曲目の "Sedated" のこれでもかと畳み掛けて来るマイケルのギターソロは、アーチエネミーの時とは違う、ハードロック的世界観を情緒豊かに示す素晴らしい演奏となっている。そしてマイケルだけでなく、『 Ad Astra 』を以ってスピリチュアル・ベガーズを脱退したヴォーカル兼ベースのスパイス ( Christian "Spice" Sjöstrand ) の野暮ったくも色艶のある声、多彩なグルーヴを生み出すドラムのラドウィグ・ヴィット ( Ludwig Witt )、の組み合わせは不思議な魅力があった。実際の人間関係はどうであれ ( マイケルとスパイスの相性など )、これだけの作品を生み出すのは、やはり音楽的才能の組み合わせのマジックだというところでしょうか。

 

しかし、マイケルがスピリチュアル・ベガーズの活動を停止し、アーチ・エネミーに力を注ぐ現状で、これらの作品がマニアックな音楽愛好家の間だけでしか聞かれずに静かに忘れられていくのはもったいないですね …… 。