![]()


▶ Chapter1 MVの質は低いかもしれない、が、そうであるにせよ ……
![]()
A. 2024年11月8日に YouTube で韓国のガールズグループ IVE の新曲『 Supernova Love 』が up されたのですが、コメント欄が批判 ( 大半が日本からのもので、おそらくIVEファンではない ) で埋め尽くされているという "狂気じみた現象" が起きている んですね。このような書き込みが今でも続いている。客観的に見ても異様ともいえる状態です ( もういい加減にしておかないと誹謗中傷や威力業務妨害で訴訟を起こされる人が出てもおかしくない )。
何が批判されているかというと、戦争をテーマ ( 本当は違うのですが詳細はあとで ) とする坂本龍一の "戦場のメリークリスマス" が世界的DJのデヴィッド・ゲッタによって適当にサンプリングされた挙句、恋愛ソングとしてIVEによって歌われている事が、坂本龍一の原曲をリスペクトも無く貶めている、という事です。この上なく迷惑で、疑似正義感に溺れた者たちからの絡まれ話だという訳です。
▶ 『 Supernova Love 』 by IVE, David Guetta
B. 確かに今回の楽曲『 Supernova Love 』はデヴィッド・ゲッタの今までのサンプリング曲に比べて出来がいいとはいえず、そこに載せられた歌詞、MV もチープな感じがするのは否めない。しかし、レベルが高くないとはいえ激しく糾弾されるようなものではない。むしろ、ここで激しく糾弾するのは、楽曲の感想・意見の域を超えた 民衆における原-政治的暴力としての "疑似道徳的批判" と化してしまっている事の現れでしかない。
![]()
C. さて、IVEの今までのMVと見比べた時、この落差は今回の楽曲が IVE側内の主導制作ではなく、コストの安い外部委託制作か、あるいは デヴィッド側によるMV制作込みでの彼との契約であるか、による事が原因なのかもしれないと思いましたね ( デヴィッドを模したMV内の出来の悪いアニメーションなどから分かるように )。というのもIVEの日本でのレコードレーベルはソニーミュージックなのですがその公式サイトでは正式シングルとしては発表されていない事から考えると、『 Supernova Love 』がデヴィッド側との単発契約であり、デヴィッドが過去の楽曲のレーベルであるヴァージンレコードとマイナーなKDMレコードの共同リリースという向こう側の主導のビジネス的側面が見えてくる。
![]()
D. つまり、今回の件はSTARSHIPエンターテインメントが大物DJとその取り巻きの会社に対して余り口出しする事が出来なかった状況 ( 契約金は出さねばならないとしても ) であった事も容易に想像できる。そのような縛りのある多くの契約条項があったとしたら、それが必然的に楽曲及びMVの質の低下の繋がったという話も十分にありうる訳ですね。
というのも、アメリカ・ヨーロッパ方面で活躍する世界的DJのトップクラスの人達のステージ出演・楽曲制作・等の諸々の契約金額は、少なくとも日本・韓国の音楽業界の感覚では理解出来ないものであるかしれない。というのもデヴィッド1人で年収が日本円で20億円近くあるんです ( ザ・チェインスモーカーズになると50億円ともいわれる )。それに対してIVEの所属事務所であるSTARSHIPエンターテイメントは営業利益が日本円で43億円程です ( 2023年 )。デヴィッドの契約単価がいかに高いかが分かります。おそらく STARSHIPエンターテイメントはデヴィッドと契約を結ぶとき、驚いた事でしょう。1個人にそんなに払っていたら楽曲からの利益なんてほとんど出ないどころか完全な赤字だ、と。
![]()
E. ならば無理してデヴィッドと契約を結ばなくてもいいのではないかと思われるかもしれない。確かにそうなのですが、デヴィッド側からのアプローチが韓国の音楽業界にあった時に、世界的DJとコラボする話題性でIVEの地位を高めようとする戦略を取るのは何ら不思議ではありませんから。IVEは2023年はワールドツアーで世界を回ってましたしね。採算度外視の長い目での将来的利益を取るという事です。
で、デヴィッド側からのアプローチが韓国の音楽業界にあったというのは、HYBE所属の LE SSERAFIM 『 CRAZY 』のデヴィッド・ゲッタによってREMIX を施されたヴァージョンが2024年9月9日にYouTubeにupされているという関連性からも分かりますね。IVEが9月4、5日の東京ドーム公演で『 Supernova Love 』を先行披露したのに続いての出来事でしたから。少し驚きましたね、HYBEによる意図的な被せなんだろうなと。実際の契約はどちらが先だったのかは分かりませんが。
▶ 『 CRAZY ( David Guetta Remix ) 』Official Visualizer
▶ 『 CRAZY ( David Guetta Remix ) 』Extended Ver.
![]()
▶ Chapter2 坂本龍一へのリスペクトがないと批判する割には ……
![]()
A. しかし、上で述べた事情があるかもしれないにせよ、『 Supernova Love 』が坂本龍一の "原曲" の世界観を貶めているのに変わりはないと批判する声は止まないのでしょう。坂本龍一へのリスペクトが無い、という事なのですが、そこで気になるのは坂本龍一へのリスペクトと言う割には、批判する人はもうほとんどがその原曲を "戦場のメリークリスマス" という通称 で名指している という点です。言うまでもなく、その原曲の正式タイトルは "Merry Christmas Mr.Lawrence" ですね。こう指摘すると、そんなの分かっている、広く知られている通称で呼んでも問題ないだろと開き直る人もいるでしょう。
![]()
B. しかし、そのような開き直りの中には果たして本当の意味でのリスペクトがあるのでしょうか? というのも "Merry Christmas Mr.Lawrence" はまずは映画のテーマ曲であるというのが前提 なんです。こう言うとすぐに、いや優れた曲だから映画と切り離して単体で考えるのも可能だろうと反論する人もいるかもしれませんが、実はそれは映画をまともに観ていないにも関わらず、さも観たかのような振舞いをしている事を露呈させるのです。
![]()
C. どういうことかというと、"Merry Christmas Mr.Lawrence" とは映画のラストでビートたけし演ずるハラ・ゲンゴ元軍曹が獄中から、面会に来たロレンス元陸軍中佐へ投げかけた 象徴的なセリフ なんです。坂本龍一は そのセリフ自体を尊重して、そのままテーマ曲のタイトルにした 訳です。出演者でもあった彼がその映画にどれだけ魅せられていたかが分かろうというものです。映画から切り離してしまってはその内容が半減してしまうでしょう。
![]()
D. そして、その映画のタイトルこそが『 戦場のメリークリスマス 』なのであり、それは映画監督、大島渚の作品に他ならない のですね。不思議な事に、坂本龍一へのリスペクトが無いと言ってIVE、その所属事務所、デヴィッド・ゲッタを批判する連中は本来、映画のタイトルである "戦場のメリークリスマス" を坂本龍一の曲のタイトルとして使う事に何の違和感も抱いていない。それのどこに映画へのリスペクト、監督である大島渚へのリスペクト、があるのでしょう。だから、批判者の口からは大島渚という言葉が出てこない。というか、多分知らない。映画も観てない。
自分らはそういうリスペクトを持っていないくせに、IVE、その所属事務所、デヴィッド・ゲッタには坂本龍一へのリスペクトが無いといって批判する。もう、どうしようもない知性の低さ、教養の無さ、がそこには現れている。知性が低い人間に限って、すぐに道徳やリスペクト、等の 疑似正義的概念 を使ったり、私たちの坂本龍一が貶められて悲しいみたいな 疑似感傷連帯感、に訴えて 他人を間接的に抑圧する。挙句の果てには坂本龍一を何かの疑似教祖であるかのように奉る宗教性に走る。そういう人達は結局の所、IVE やデヴィッド・ゲッタについて何も考えずに、ただ自分らの憂さ晴らしをする事しか考えていない。
![]()
E. そうすると片付けるべき残る問題は、"Merry Christmas Mr.Lawrence" という戦争をテーマにした曲の世界観を『 Supernova Love 』が台無しにしているという批判の実質的内容です。それが果たして単なるいちゃもんではない内容を備えているかどうか検討する必要があるという事です。
批判者は "Merry Christmas Mr.Lawrence" について、戦争をテーマにしている、反戦を訴えてる、などと何とかのひとつ覚えみたいに繰り返し、そのような崇高なテーマ性を踏みにじるような改変はけしからんみたいな事を言う。
しかし、戦争をテーマにしているという表現自体が、何も解釈していない、いや、そもそも映画を真剣に観てないから解釈する事が出来ていない事を示している。『 戦場のメリークリスマス 』をきちんと観た人ならば、それが戦争をテーマにしているとか、反戦メッセージだみたいな間抜けな事を言ったりはしない、というか、そういう事ではないのが分かるはずです。次回はその辺について考えましょう。
![]()
[ 以下の記事へ続く ]
![]()