〈 It / Es 〉thinks, in the abyss without human.

Transitional formulating of Thought into Thing in unconscious wholeness. Circuitization of〈 Thought thing 〉.

TV【 相棒13 最終回 】を哲学的に考える【1】

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2015年3月18日に放送されたTVドラマ【 相棒シーズン13 最終回 】について僕なりの解釈を述べようと思います、あくまでも哲学的、あるいは必要であれば精神分析的とでも呼べる限定的解釈ではありますが。

 

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 1.   不快な最終回?

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■   この最終回の、ダークナイトと呼ばれる、法では裁けぬ悪に私的制裁を加える連続暴行犯の正体が杉下右京(水谷豊)の相棒である甲斐亨(成宮寛貴)であったという衝撃の結末が議論を引き起こしています。曰く、この結末は甲斐亨が相棒であった今までのシーズンを台無しにするとか、この結末は不快であり納得のいくものではない、というところです。しかし、このことはこの最終回がそれまでの放送とは違う衝撃を与えたという意味で考察に値するものだと思われるのです、一部のファンには不評であるかもしれませんが。

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 2.   ダークナイト 甲斐亨

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■   冒頭からダークナイトの正体が甲斐亨である事は明らかですが、そうはいっても犯人は別にいるかもしれないというを含みを残しつつも結局はそれが覆ることなく(途中でダークナイト模倣犯が出てきたりするが)話は進んでいきます。この展開は何の捻りもなく杉下右京の推理が醍醐味である【 相棒 】のお決まりの展開から逸脱していると思わせます。しかしこの逸脱が異質な要素が紛れ込んでいるのが原因だとしたらどうでしょうか?
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 3.   異質な雰囲気

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■   通常の『 相棒 』では犯人を突き止める、あるいは推理していく過程で犯人の人間関係や彼らの中に抱え込んでいるものを含めたバックグラウンドが必要不可欠な構成要素として回顧的に差し込まれますが、この最終回においては犯人である甲斐亨のバックグラウンドが杉下右京の推理という身振りの中に収まりきれない、あるいは杉下右京の推理だけでは清算しきれないものとして、【 推理 】という要素とは別の【 異質なもの 】として最初から含まれているのです。いや今までのシリーズにおいても杉下右京の推理では解消しきれずに不穏性を感じさせて残るものはありました、国家的陰謀、警察内部における不正など。

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 4.   杉下右京の盲点?

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■   しかし今回、決定的なのはそれが杉下右京の隣に常にいる者によって引き起こされ、杉下右京がいかに客観的に推理しようともし切れずに自分がその渦中に巻き込まれている【 不安定な関係性 】が話の前面に出ているという事です。

 

■   この【 相棒 】という名の【 関係性 】、杉下右京と甲斐亨という組合せの未だ規定されていない不明瞭性 】( とはいえ過去の相棒についても同様ですが ) は杉下右京自身の推理力にも影を落としています、甲斐亨の犯行に気付かないという具合に(実際には最終回の脚本内容の不完全さによるものですが、ここでは過去の杉下右京の盲点であったと考えるようにしましょう)。

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 5.   二人の出会いと関係

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■   そしてこの最終回を今までのどの回よりも興味深くしているのは、既に述べましたが杉下右京と甲斐亨という二人の未だ規定されていない【 不明瞭性 】に形を与えようとして、二人の出会いによって始まる出発点に戻って来ている事です。

 

■  相棒 】という名のもとに、二人の出会いから幾つもの事件、困難、周囲との確執を経て再び二人の【 関係性 】への焦点へと合わせる【 回帰性 】のストーリーを最終回へ持って来たという事は、単なる刑事もののドラマを越えて一瞬ではあれ人間関係における弁証法的普遍性に近づいたという意味で奇蹟的な回であったといえるでしょう。

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   TV 【 相棒13 最終回 】を哲学的に考える【2】へ続く

 

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